生命保険のための医学知識

生命保険、医療保険の引受や支払に関係する医学知識を都度書いてます。

貧血(ヒンケツ)

血液中の赤血球が乏しくなること、およびそれにより起こる諸症状をいいます。赤血球は血流に乗って酸素を全身に供給しているため、不足すると動悸・息切れがみられますが、徐々に進行する場合は自覚症状が無いことが多いです。原因としては、消化管や子宮からの慢性出血による貧血が多く、その他にビタミン摂取の不足、自己免疫障害の他、悪性腫瘍や慢性炎症等に続発する二次性貧血などがあります。

 

 

イタイイタイ病

 カドミウムの慢性中毒により、腎臓の尿細管の再吸収障害、骨の軟化症および粗鬆症を来し、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって生じたものです。主症状は疼痛で、腰痛や下肢の筋肉痛などで始まって次第に各部に広がり、体を動かす・咳をする等で激しい痛みを訴えるようになります。

打撲

打撲とは、転倒やものに強くぶつかるなど体外からの力による、傷口を伴わない軟部組織の損傷をいいます。顔面・頭部、胸腹部、骨盤腔の打撲では脳、肺、肝臓、脾臓などの重要臓器の損傷を合併することがあります。また、四肢の打撲で著しいはれが生じ、神経、血管が圧迫されて機能障害が現れるコンパートメント症候群、大腿骨・上腕骨近くの筋肉内出血の吸収不良で限局性に骨のような塊ができる外傷性骨化性筋炎などもあります。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

 心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後になって様々なストレス障害を引き起こす疾患です。トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷があります。症状として精神的不安定による不安・不眠などの過覚醒症状、トラウマの原因になった障害・関連する事物に対しての回避傾向、事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や全体に関わる追体験があります。

好酸球増多症候群

末梢血中好酸球数が異常増加し、450/μLを超えるものを指します。原因は様々であり、明らかになっていませんが20~50歳の男性に多いのが特徴です。好酸球の浸潤は、造血器・神経・皮膚・呼吸器など多岐にわたり、これら浸潤臓器に基づいた症状つまり臓器障害を呈します。このほか全身倦怠感・筋肉痛・発熱などを認めます。症状として、過半数には、紅斑・丘疹や蕁麻疹などの皮膚症状が出現します。その他、心臓の病変が多く、心筋の壊死による梗塞から心不全を生じることがあります。皮膚症状のみの場合はステロイド薬の外用・光線療法、全身症状や臓器病変がある場合には、ステロイド薬の内服を行います。

経静脈電極抜去術(K599-5)

経静脈電極抜去術(レーザーシースを用いるもの)とは、心臓の植込型ペースメーカ-のリードを抜去交換する際に、エキシマレーザーを使って血管壁とリードとの癒着を剥離する手術である。

眼底出血

網膜表面の血管の破綻や閉塞することで起こる網膜の出血であり、網膜出血や硝子体出血など、網膜から硝子体に見られる出血を指します。原因として、糖尿病網膜症、高血圧性眼底、網膜中心静脈閉塞症、加齢黄斑変性、網膜裂孔、ぶどう膜炎、動脈硬化、貧血、白血病、腎臓病、外傷性など多岐にわたります。

硝子体手術

 普通保険約款の手術について、一般に注射は手術給付金非該当ですが、例外があるようです。眼球注射の一部のものは該当と判断されています。すなわち眼球注射を硝子体手術に該当させ手術給付金を支払うものがあります。加齢黄斑変性症などの病気に対して、アバスチンとルセンチスを眼球注射するときは、手術給付金該当となります。これは両眼失明が生命保険では高度障害に該当するため、あえて手厚い保護を眼科疾患には適用しようと考えたことによるようです。

アバスチン(中外製薬)ことベバシズマブは、2007年4月に承認された世界初の血管新生阻害薬です。このアバスチンの副作用のリスクを小さくして眼に使えるよう改良を加えてできたのが
ルセンティスです。どちらも加齢黄斑変性症の有効な抗VEGF(vascular endothelial growth factor)治療薬です。

デング出血熱

 デング出血熱は、デングウイルスの再感染時に発症します。たとえば4種の血清型があるデング熱の1型にかかった場合、1型に対しては終生免疫を獲得するが、 他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失し、その後は他の型に感染しうるようになります。この再感染時にデング出血熱になる確率が高くなるため、血清型別も含めた診断が重要です。一部の患者において突然に、血漿漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱が起こります。重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的です。臨床症状としては、冷汗、四肢の冷感、点状出血、腹水・胸水、肝腫大、血小板減少などがみられます。血症漏出がさらに進行すると循環血液量不足からショック状態となります。これがデングショック症候群です。

 

眼窩脂肪ヘルニア

眼窩脂肪ヘルニア(脂肪脱)とは、加齢などによって、眼窩の中にある筋肉や靭帯が弱くなり、本来は眼球の後ろ側にあるはずの脂肪の組織(眼窩脂肪)が、弱くなった隙間から目の前の方に出てきてしまう疾病です。症状は、眼のゴロゴロとした異物感です。治療は、結膜切開をして脱出した脂肪を切除します。

顕微鏡下精巣内精子採取手術

顕微鏡下精巣内精子採取手術(Microdissection Testicular Sperm Extraction; MDTESE)とは、陰嚢を0.5cm~1.0cmほど切開し、精巣内の精細管と呼ばれる小さな組織を採取する方法である。全身麻酔をかけて顕微鏡下に精巣内をくまなく観察する方法を特にMDTESEという。これは少しでも多くの精子を採取するために行われる。非閉塞性無精子症では、この手術を行ってみないと精子を採取できるかどうかは分からない。ふつうは日帰り手術で行われる。この手術により男性ホルモンが非常に低値となることがあるため、片側の睾丸に対してのみ手術が行われる。

医科診療報酬点数表では、組織試験採取、切採法(精巣)(睾丸)D417-11に該当させているようである。本手術の保険適応はない。

異型脂肪腫様腫瘍

異型脂肪腫様腫瘍(atypical lipomatous tumor)は、脂肪肉腫の中で最もよく見られる低悪性度腫瘍である。別名、高分化型脂肪肉腫(well differentiated liposarcoma)や異型脂肪腫などとよばれている。50歳代が好発年齢で、大腿深部を始めとする四肢に多く発生する。肉眼的には黄色から白色の分葉化した腫瘍で、良性腫瘍脂肪腫との鑑別困難なことがある。異型脂肪腫様腫瘍の約10%が悪性化して脱分化型になるとの報告もあるが、完全に手術切除できれば再発もなく予後良好の腫瘍である。

ウエストナイル熱

ウエストナイル熱(West Nile fever)とは、ウエストナイルウイルスによる感染症です。感染症法では第4類感染症に分類されます。1937年アフリカのウガンダで初めてウイルスが 分離されました。米国全土に広がっています。日本では、2005年に米国から帰国した30歳代男性が初めて患者として診断されています。

ウエストナイルウイルスは、鳥 の体内で増殖し、ヤブ蚊などを経由して人に感染するが、感染者の発症率は20%です。 ウエストナイル熱の潜伏期間は2~6日で、発熱、頭痛、頭痛、咽頭痛、背部痛、筋肉痛、関節痛が主な症状です。皮疹やリンパ節腫脹などが起こることもあります。対象療法で治療です。

テイサックス病

テイサックス病(Tay Sachs disease)とは、ライソゾーム病の1つで脳の神経細胞に多いガングリオシドが過剰に蓄積される疾患です。 GM2 ガングリオシドーシスB異型ともいいます。ガングリオシドとは、細胞の膜などにある糖脂質です。 患者は、進行性の精神運動障害や眼底黄斑部のチェリーレッド斑(cherry-red spot)などの症状を呈します。視覚障害聴覚障害、 筋委縮、運動障害、言語障害などさまざまな症状を呈します。有効な治療法はなく、対症療法が主体です。

OTSC

 OTSC(over the scope clip)システムとは、内視鏡下で粘膜をフード内に引き込んでクリッピングする方法です。管腔全層に幅の広いクリップをかけることができ、消化管の穿孔や潰瘍の止血に適用されます。この機械は、NOTES (Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)のときに意図的に切開した食道や胃などの消化管壁を閉じるために開発されたようです。