亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染によると推定される原因不明の甲状腺炎で、濾胞崩壊による甲状腺ホルモンの血中放出により、一過性の甲状腺機能亢進状態を呈する病態です。30~40歳代女性に多いです。感冒様前駆症状に続き、圧痛を伴う甲状腺腫があり、結節性で硬く、圧痛部はしばしば移動します。頻脈、動悸、発汗、悪寒、体重減少、発熱などの甲状腺中毒症状を起こし、夜間に症状が強く出ます。放置しても8週間くらいの経過で亜急性甲状腺炎は自然治癒します。対症療法としてアスピリンなどの鎮痛剤投与を行います。
腎機能障害の原因分類
腎機能障害の原因を考える際には、腎前性、腎性、腎後性と分けて考える。
① 腎後性(Post-renal): 尿路の閉塞
腎臓以降の尿路が閉塞し、尿の排出が妨げられている状態です。超音波検査で水腎症の有無を確認することで、速やかに診断・除外できます。
主な原因: 前立腺肥大症、尿路結石、骨盤内腫瘍、後腹膜線維症など。
② 腎前性(Pre-renal): 腎血流の低下
腎臓自体の構造異常ではなく、循環血流量の減少や有効血流量低下によって腎臓への血流が維持できなくなっている状態です。
主な原因: 脱水、出血、ショック、心不全、肝硬変、NSAIDsやACE阻害薬/ARBなどの薬剤性。
臨床的徴候: 体重減少、皮膚のツルゴール低下、血圧低下、BUN/Cr比の著増(通常10:1以上のところ、20:1以上に上昇しやすい)。
③ 腎性(Intra-renal): 腎実質自体の障害
腎臓内部の解剖学的部位(糸球体、尿細管、間質、血管)のどこに問題があるかによってさらに分類します。
主な原因: 慢性腎臓病、慢性糸球体腎炎、糖尿病腎症、腎硬化症、間質性腎炎
eGFRの低下スロープが年3 mL/min/1.73m²を上回る場合、生活習慣病以外の原疾患を否定できない場合、特に蛋白尿に血尿を伴う場合、またCKDステージG4以上の場合は、腎臓専門医相談を考える。
黄斑上膜
黄斑上膜(epiretinal membrane:ERM)は、網膜の最も内側にある内境界膜(ILM)の表面に、線維性・細胞性の薄い膜が形成される疾患である。「黄斑前膜」「網膜前膜」「黄斑上膜」「黄斑パッカー(macular pucker)」などとも呼ばれる。多くは50歳以降にみられ、特に高齢者では比較的よくみられる黄斑疾患である。
1.黄斑上膜とは何か
正常な網膜では、黄斑部の表面は滑らかな状態である。
ところが、加齢などに伴う後部硝子体剥離を契機として、網膜表面にグリア細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞様細胞などが増殖し、薄い膜を形成することがある。
この膜が徐々に収縮すると、
黄斑上膜形成
↓
網膜表面を牽引
↓
黄斑の皺襞・肥厚・構造変形
↓
視力低下・変視症
という経過をとる。
黄斑上膜の大部分は特発性であり、EyeWikiでは約95%が特発性とされている。
2.原因
大きく特発性と続発性に分けると理解しやすい。
分類 主な原因
特発性 加齢、後部硝子体剥離など
糖尿病関連 糖尿病網膜症
網膜血管疾患 網膜静脈閉塞など
炎症性疾患 ぶどう膜炎など
外傷 眼外傷
手術後 白内障手術、硝子体手術など
網膜疾患 網膜裂孔・網膜剥離など
その他 眼内腫瘍など
特に高齢者では、後部硝子体剥離に伴う網膜表面の細胞増殖が重要な発症機序と考えられている。
3.どのような症状が出るのか
黄斑上膜があっても、無症状であることが非常に多い。
症状が出る場合には、
視力低下
物が歪んで見える(変視症)
物が小さく見える(小視症)
片眼性複視
中心視力の低下
読書時の文字の歪み
などがみられる。
特に特徴的なのが変視症(metamorphopsia)である。
例えば、直線の電線や窓枠が、
「波打って見える」
という訴えが典型的である。
4.眼底ではどのように見えるか
眼底検査では、黄斑部に
光沢のある薄い膜
がみえる。
進行すると膜が収縮するため、
黄斑部の皺襞
網膜血管の蛇行
黄斑部の肥厚
中心窩陥凹の消失
などが生じる。
比較的軽症では、眼底写真では「テカテカした膜」のように見える程度であるが、進行すると黄斑部全体の構造が変形する。
5.診断の決め手はOCTである
黄斑上膜の評価では、OCT(光干渉断層計)が最も重要な検査である。
OCTでは、
網膜の内側表面に高反射性の線状構造物
として黄斑上膜が描出される。
さらに、
網膜内層の肥厚
中心窩陥凹の消失
網膜皺襞
黄斑浮腫
嚢胞様変化
vitreomacular traction(硝子体黄斑牽引)
pseudohole(偽黄斑円孔)
などを同時に評価できる。
したがって、眼底写真で「黄斑上膜疑い」とされた場合には、OCT所見を確認することが診断・重症度評価の中心となる。
6.黄斑円孔との違い
黄斑上膜では、膜が収縮することによって黄斑部を牽引するため、偽黄斑円孔(macular pseudohole)を形成することがある。
これは実際には網膜組織が完全に欠損した「黄斑円孔」ではない。
黄斑上膜による偽黄斑円孔
膜が収縮
↓
中心窩周囲の網膜が牽引される
↓
中心窩が急峻に見える
↓
偽黄斑円孔
一方、真の黄斑円孔では網膜組織に実際の欠損が生じる。
この鑑別にはOCTが極めて有用である。
7.治療
無症状・軽症
視力が良好で症状が軽ければ、通常は経過観察でよい。
黄斑上膜そのものを薬物で消失させる治療は確立していない。
したがって、
視力測定+眼底検査+OCT
によって経過を観察する。
症状が強い場合
視力低下や変視症が日常生活に支障を来す場合には、手術を検討する。
基本的な手術は、
硝子体手術(pars plana vitrectomy:PPV)
+
黄斑上膜剥離(膜除去)
である。
症例によっては、再発抑制などを目的として内境界膜(ILM)剥離を併施することがある。
8.手術をすれば視力は改善するのか
多くの症例では手術後に視力や変視症が改善する。
ただし、
「膜を取れば必ず正常視力に戻る」わけではない。
黄斑上膜が長期間存在すると、網膜そのものに構造的変化が生じるためである。
特にOCTで、
外網膜障害
ellipsoid zone(EZ)の障害
著明な網膜肥厚
長期間の牽引
などがある場合には、手術後の視力回復が限定される可能性がある。
一般に術後の視機能改善は数か月かけて進み、多くは3~6か月で改善がみられるが、さらに1~2年かけて改善する例もある。
9.保険医学的に重要なポイント
黄斑上膜は、保険査定では「黄斑上膜あり」という診断名だけでは重症度を判断できない疾患である。
重要なのは次の項目である。
評価項目
査定上の意味
視力
現在の視機能障害の程度
変視症
黄斑機能障害の重要な症状
OCT
黄斑上膜の程度を客観的に評価
網膜肥厚
膜による牽引の程度を反映
中心窩形態
黄斑構造の変形を評価
EZ障害
視力予後に関係
黄斑浮腫
視力低下の原因となる
偽黄斑円孔
牽引性変化の存在を示唆
手術歴・手術予定
重症度・症状の判断材料
原疾患
糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞など
特に査定上は、
「黄斑上膜がある」
ことより、
「黄斑上膜によって視機能がどの程度障害されているか」
を評価することが重要である。
例えば、視力1.0でOCT上軽度の黄斑上膜のみという症例と、視力0.3で著明な変視症を伴い、OCTで強い黄斑牽引と網膜構造変化を認める症例では、医学的な意味は大きく異なる。
まとめ
黄斑上膜は、
加齢・後部硝子体剥離など
↓
網膜表面に細胞性線維性膜が形成
↓
膜が収縮して黄斑を牽引
↓
黄斑の皺襞・肥厚・変形
↓
変視症・視力低下
という病態で理解するとよい。
そして、眼底検査で黄斑上膜を指摘された場合には、OCTで「膜の厚さ」だけを見るのではなく、黄斑の構造変化、牽引、浮腫、EZ障害などを総合的に評価することが重要である。
リンパ節郭清
乳癌の腋窩リンパ節転移陽性症例でのリンパ節郭清は必ず行なわれます。腋窩リンパ節郭清に伴う合併症は、腋窩漿液腫、肩関節の硬直、上腕の知覚鈍麻、上腕の浮腫などが主なものです。原発巣に一番近いリンパ節をセンチネルリンパ節と言います。ここに転移がない、SN陰性ならばリンパ節転移がないことになります。
トルーソー症候群
トルーソー(Trousseau)症候群とは、潜在性の悪性腫瘍の遠隔効果により神経症状を生じる傍腫瘍性神経症候群の一つで、悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中症状を生じる病態です。そのため疾患の治療と抗凝固療法が必要となります。
原因となる悪性腫瘍は固形癌が多く、その中では婦人科腫瘍が最も多くなっています。その他、肺癌・消化器癌・腎臓癌・前立腺癌などがあります。また脳卒中は大脳皮質に多発する梗塞が多く、血液凝固マーカーの上昇を認ます。脳卒中の原因とし非細菌性血栓性心内膜炎による心原性脳塞栓が最も多く、ついで血管内凝固による微小血栓・塞栓、深部静脈血栓症を併発した卵円孔開存による奇異性脳塞栓症、脳静脈洞血栓症、腫瘍塞栓などがあります。
ウェーバー・クリスチャン病
発熱を伴って再発を繰り返す、病原体によらない皮下脂肪と内臓脂肪の部分におこる脂肪織炎です。主に四肢の皮下、時に腹部や背部の皮下に生じますが、内臓脂肪にも炎症が起きた時は波及して内臓障害に至り、致命的になることがあります。炎症は菌の感染によるものではなく、原因は不明です。
ヒルシュスプルング病
先天性巨大結腸症とも呼ばれ、消化管の動きを制御している腸の神経節細胞が、生まれつき無いために重い便秘症や腸閉塞をおこす病気です。浣腸や肛門プジー、洗腸などで排便がコントロールできない場合や腸炎が改善しない場合などには一時的な人工肛門の増設が必要になります。
オスグッド・シュラッター病
サッカーやバスケットボールなどのスポーツをする中学生や高校生に多く見られ、膝の脛骨が出っ張って痛むという骨軟骨炎です。様々なスポーツでジャンプや屈伸を行うことにより、大きな衝撃が膝付近に生じるために炎症が生じ、脛骨粗面に存在する骨端核に機械的牽引力がかかり引き起こされます。
特発性器質化肺炎
特発性器質化肺炎(cryptogenic organized pneumonia; COP)とは、肺の奥にある肺胞という小さな袋や、その手前の細い気管支に炎症が起き、そこに器質化と呼ばれるキノコのような形のポリープ状の組織ができてしまう病気です。以下に、この病気について、分かりやすく5つのポイントで解説します。
1. 「特発性」とは「原因不明」という意味
器質化肺炎には、薬剤や膠原病、感染症などが原因で起こるものもありますが、原因が特定できないものを特発性器質化肺炎と呼びます。50代から60代の方に多く見られ、性別や喫煙歴との関連はありません。
2. 主な症状
数日から数週間という比較的短い期間で、以下のような症状が現れます。
せき、息切れ
発熱、だるさ(風邪のような症状)
症状が出ないまま、健康診断のレントゲンなどで偶然見つかることもあります。
3. 診断の特徴
胸部CT検査で、肺の中に濃い影や淡い影が複数見られるのが特徴です。この影は細菌性の肺炎と似ていますが、影の位置が移動する(一部が消えて別の場所に現れる)という不思議な現象が起きることもあります。最終的には、内視鏡検査で肺の組織を詳しく調べて診断を確定します。
4. 治療方法
症状がある場合や影が広がっている場合は、主にステロイド薬の内服で治療を行います。症状が重い場合には、短期間に大量のステロイドを点滴するステロイドパルス療法が行われることもあります。一方で、無症状で影が小さい場合は、自然に改善することもあるため、治療せずに経過を観察することもあります。
5. 経過と注意点
一般的にステロイド薬が非常によく効く病気で、80%以上の患者さんは数週間から3か月以内に改善します。ただし、ステロイドの量を減らしたり中止したりすると再発することがあるため、注意が必要です。また、治療中は免疫力が下がり感染症にかかりやすくなるため、手洗いやうがい、マスク着用などの予防が大切です。